相続を放棄した者等の債務控除

(相続を放棄した者等の債務控除)

13‐1 相続を放棄した者及び相続権を失った者については、法第13条の規定の適用はないのであるが、その者が現実に被相続人の葬式費用を負担した場合においては、当該負担額は、その者の遺贈によって取得した財産の価額から債務控除しても差し支えないものとする。

(相続財産に関する費用)

13‐2 民法第885条《相続財産に関する費用》の規定により相続財産の中から支弁する相続財産に関する費用は、法第13条第1項第1号に掲げる債務とはならないのであるから留意する。

(「その者の負担に属する部分の金額」の意義)

13‐3 法第13条第1項に規定する「その者の負担に属する部分の金額」とは、相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。)によって財産を取得した者が実際に負担する金額をいうのであるが、この場合において、これらの者の実際に負担する金額が確定していないときは民法第900条から第902条《遺言による相続分の指定》までの規定による相続分又は包括遺贈の割合に応じて負担する金額をいうものとして取り扱う。ただし、共同相続人又は包括受遺者が当該相続分又は包括遺贈の割合に応じて負担することとした場合の金額が相続又は遺贈により取得した財産の価額を超えることとなる場合において、その超える部分の金額を他の共同相続人又は包括受遺者の相続税の課税価格の計算上控除することとして申告があったときは、これを認める。

(葬式費用)

13‐4 法第13条第1項の規定により葬式費用として控除する金額は、次に掲げる金額の範囲内のものとする。
(1) 葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行うものにあっては、その両者の費用
(2) 葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用
(3) (1)又は(2)に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの
(4) 死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用

(葬式費用でないもの)

13‐5 次に掲げるような費用は、葬式費用として取り扱わないものとする。
(1) 香典返戻費用
(2) 墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借入料
(3) 法会に要する費用
(4) 医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用

(墓碑の買入代金)

13‐6 被相続人の生存中に墓碑を買い入れ、その代金が未払であるような場合には、法第13条第3項本文の規定により、当該未払代金は債務として控除しないのであるから留意する。

(「その財産に係る公租公課」の意義)

13‐7 法第13条第2項第1号に掲げる「その財産に係る公租公課」とは、法施行地にある財産を課税客体とする公租公課、例えば、固定資産税、鉱区税等をいうものとする。

(源泉所得税、消費税の控除)

13‐8 営業所又は事業所において所得税法第4編《源泉徴収》の規定により源泉徴収した所得税(東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法平成23年法律第117号第4章《復興特別所得税》第4節《源泉徴収》の規定により源泉徴収した復興特別所得税を含む。)で相続開始の際に未納であったもの並びに当該営業所又は事業所において生じた消費税、揮発油税及び地方揮発油税、酒税等で相続開始の際に未納であったものは、法第13条第2項第5号に掲げる債務に該当するものとして取り扱うものとする。

(特別寄与料の額が特別寄与者の課税価格に算入されない場合)

13‐8の2 特別寄与者が制限納税義務者に該当する場合において、支払いを受けるべき特別寄与料が法第10条の規定により法施行地外にあるものとされるときは、当該特別寄与料の額は当該特別寄与者に係る相続税の課税価格に算入されないことから、相続人が支払う当該特別寄与料について、法第13条第4項の規定の適用はないことに留意する。

(相続時精算課税適用者の債務控除)

13‐9 法第21条の9第5項に規定する相続時精算課税適用者(以下「相続時精算課税適用者」という。)に係る法第13条第1項及び第2項の規定の適用については、当該相続時精算課税適用者の相続又は遺贈による財産の取得の有無に応じて、それぞれ次に掲げるとおりとなるのであるから留意する。
(1) 相続又は遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者(法第21条の15第1項に該当する者) 無制限納税義務者である場合には第13条第1項の規定、制限納税義務者である場合には同条第2項の規定が適用される。
(注) 当該相続時精算課税適用者が、相続人に該当せず、かつ、特定遺贈のみによって財産を取得した場合には、同条の規定は適用されないのであるから留意する。
(2) 相続又は遺贈により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者(法第21条の16第1項に該当する者) 当該相続に係る被相続人の相続開始の時において法施行地に住所を有する者である場合には第13条第1項の規定、法施行地に住所を有しない者である場合には同条第2項の規定が適用される。
(注) 当該相続時精算課税適用者が、相続人又は包括受遺者に該当しない場合には、同条の規定は適用されないのであるから留意する。

(死亡した相続時精算課税適用者に係る債務控除)

13‐10 特定贈与者の死亡に係る相続税額の計算において、当該特定贈与者の死亡前に死亡している相続時精算課税適用者については、法第13条の規定の適用はないのであるから留意する。
(注) 特定贈与者の死亡に係る相続税額の計算上、当該特定贈与者の債務及び当該特定贈与者に係る葬式費用については、当該特定贈与者の相続人又は包括受遺者の課税価格から控除するのであるから留意する。

(確実な債務)

14‐1 債務が確実であるかどうかについては、必ずしも書面の証拠があることを必要としないものとする。
 なお、債務の金額が確定していなくても当該債務の存在が確実と認められるものについては、相続開始当時の現況によって確実と認められる範囲の金額だけを控除するものとする。

(公租公課の異動の場合)

14‐2 課税価格又は相続税額の申告、更正又は決定があった後、法第13条及び第14条の規定により控除すべき公租公課に異動が生じたときは、当該課税価格及び相続税額について、更正を要するのであるから留意する。

(保証債務及び連帯債務)

14‐3 保証債務及び連帯債務については、次に掲げるところにより取り扱うものとする。
(1) 保証債務については、控除しないこと。ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、主たる債務者が弁済不能の部分の金額は、当該保証債務者の債務として控除すること。
(2) 連帯債務については、連帯債務者のうちで債務控除を受けようとする者の負担すべき金額が明らかとなっている場合には、当該負担金額を控除し、連帯債務者のうちに弁済不能の状態にある者(以下14‐3において「弁済不能者」という。)があり、かつ、求償して弁済を受ける見込みがなく、当該弁済不能者の負担部分をも負担しなければならないと認められる場合には、その負担しなければならないと認められる部分の金額も当該債務控除を受けようとする者の負担部分として控除すること。

(消滅時効の完成した債務)

14‐4 相続の開始の時において、既に消滅時効の完成した債務は、法第14条第1項に規定する確実と認められる債務に該当しないものとして取り扱うものとする。

(相続時精算課税適用者の死亡により承継した相続税の納税に係る義務の債務控除)

14‐5 特定贈与者の死亡以前に当該特定贈与者に係る相続時精算課税適用者が死亡したことから法第21条の17の規定により当該相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含み、当該特定贈与者を除く。以下14‐5において同じ。)が当該相続時精算課税適用者の有していた相続時精算課税の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利若しくは義務を承継した場合において、又は贈与者の死亡前に相続時精算課税選択届出書を提出しないで受贈者が死亡したことから法第21条の18の規定により当該受贈者の相続人(包括受遺者を含み、当該贈与者を除く。以下14‐5において同じ。)が当該受贈者の有することとなる相続時精算課税の適用を受けることに伴う納税に係る権利若しくは義務を承継した場合において、その承継した納税に係る義務は、当該相続時精算課税適用者又は当該受贈者の死亡に係る当該相続時精算課税適用者の相続人又は当該受贈者の相続人の相続税の課税価格の計算上、債務控除の対象とすることはできないことに留意する。

(相続人の数が零である場合の遺産に係る基礎控除額)

15‐1 法第15条第2項に規定する相続人の数が零である場合における同条第1項に規定する遺産に係る基礎控除額は、3千万円となるのであるから留意する。

(法第15条第2項に規定する相続人の数)

15‐2 相続の放棄があった場合等における法第15条第2項に規定する相続人の数について、設例を基に示せば、次のとおりである。
設例1

 上記の場合において、(B)、(C)及び配偶者が相続を放棄したときの法第15条第2項に規定する相続人の数は、(A)、(B)、(C)及び配偶者の4人となる。
設例2

 設例2上記の場合において、相続の開始以前に(A)が死亡したときの法第15条第2項に規定する相続人の数は、(D)及び(E)の被代襲者である(A)は関係なく、(B)、(C)、(D)、(E)及び配偶者の5人となる。また、(A)が相続権を失った者である場合においても同様である。
設例3

上記の場合において、(A)、(B)及び(C)が相続の放棄をしたときにおいては、民法の規定による相続人の数は、父、母、及び配偶者の3人であるが、法第15条第2項に規定する相続人の数は、(A)、(B)、(C)及び配偶者の4人となる。
設例4

 上記の場合において、(B)が民法第817条の2第1項《特別養子縁組の成立》に規定する特別養子縁組による養子となった者であるときの法第15条第2項に規定する相続人の数は、(A)、(B)、(B)を除く養子1人((C)又は(D)のいずれか1人を特定することを要しないのであるから留意する。)及び配偶者の4人となる。
設例5

 上記の場合において、相続開始以前に(A)が死亡したときの法第15条第2項に規定する相続人の数は、(D)及び(E)の被代襲者である(A)は関係はなく、養子1人((B)又は(C)のいずれか1人を特定することを要しないのであるから留意する。)、(D)、(E)及び配偶者の4人となる。また、(A)が相続権を失った者である場合においても同様である。

(胎児がある場合の相続人の数)

15‐3 相続人となるべき胎児が相続税の申告書を提出する日までに出生していない場合においては、当該胎児は法第15条第1項に規定する相続人の数には算入しないことに取り扱うものとする。

(代襲相続人が被相続人の養子である場合の相続人の数)

15‐4 相続人のうちに代襲相続人であり、かつ、被相続人の養子となっている者がある場合の法第15条第2項に規定する相続人の数については、その者は実子1人として計算するのであるから留意する。
(注) この場合の相続分は、代襲相続人としての相続分と養子としての相続分との双方を有するのであるから留意する。

(「当該被相続人に養子がある場合」の意義)

15‐5 被相続人の民法第5編第2章《相続人》の規定による相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人をいう。以下15‐5において同じ。)が兄弟姉妹である場合は、その相続人の中に当該被相続人の親と養子縁組をしたことにより相続人となった者があるときであっても、法第15条第2項に規定する「当該被相続人に養子がある場合」に該当しないのであるから留意する。

(「当該被相続人の配偶者の実子」等の意義)

15‐6 法第15条第3項第1号に規定する「当該被相続人の配偶者の実子で当該被相続人の養子となった者」とは、当該被相続人と当該配偶者との婚姻期間(婚姻後民法第728条第2項《離婚等による姻族関係の終了》の規定により姻族関係が終了するまでの期間をいう。以下15‐6において同じ。)において被相続人の養子であった者をいうものとする。また、法施行令第3条の2に規定する「当該婚姻後に当該被相続人の養子となったもの」とは、当該被相続人と同条に規定する配偶者との婚姻期間中において被相続人の養子となった者をいうものとする。

(被相続人である特定贈与者よりも先に相続時精算課税適用者が死亡している場合の相続人の数)

15‐7 特定贈与者の死亡以前に当該特定贈与者に係る相続時精算課税適用者が死亡したことから、法第21条の17又は第21条の18の規定により相続時精算課税適用者が有していた相続時精算課税の適用を受けたことに伴う納税に係る権利又は義務について承継があった場合において、当該相続時精算課税適用者に係る特定贈与者である被相続人の死亡に係る相続税額を計算するときは、法第15条第1項に規定する相続人の数には、当該相続時精算課税適用者は算入されないのであるから留意する。
(注) 法第21条の17又は第21条の18の規定により相続時精算課税適用者の有していた相続時精算課税の適用を受けたことに伴う納税に係る権利又は義務を承継した者については、当該被相続人の相続人である場合(法第15条第2項かっこ書き及び第63条に該当する場合を除く。)に限り、法第15条第1項に規定する相続人の数に算入されることに留意する。

(相続税の総額を計算する場合の取得金額)

16‐1 法第16条の規定により相続税の総額を計算する場合における同条に規定する「各取得金額」は、遺産が分割されたかどうかにかかわらず、また相続又は遺贈によって財産を取得した者がだれであるかにかかわらず、相続税の課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を控除した後の金額を、法第15条第2項に規定する相続人の数に応じた相続人が民法第900条及び第901条《代襲相続人の相続分》の規定による相続分に応じて取得したものとして計算するのであるから留意する。
(注) 15‐2の設例5の場合には、法第16条に規定する「前条第2項に規定する相続人の数に応じた相続人」の「民法第900条及び第901条の規定による相続分」は、養子1人((B)又は(C)のいずれか1人を特定することを要しないのであるから留意する。)1/2×1/2=1/4、(D)及び(E)1/2×1/2×1/2=1/8並びに配偶者1/2となる。

(課税価格の端数計算)

16‐2 相続又は遺贈(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものに係る贈与を含む。)によつて財産を取得した者の相続税の課税価格(法第19条及び第21条の15の規定の適用がある場合には、これらの規定による加算後の相続税の課税価格)を計算する場合において、その額に1,000円未満の端数があるとき又はその全額が1,000円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てるのであるから留意する。

(相続税の総額を計算する場合の取得金額等の端数処理)

16‐3 法第16条の規定により相続税の総額を計算する場合における同条に規定する「その各取得金額」に1,000円未満の端数があるとき若しくはその全額が1,000円未満であるとき又は相続税の総額に100円未満の端数があるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てても差し支えないものとする。

(あん分割合)

17‐1 法第17条に規定する「財産を取得した者に係る相続税の課税価格が当該財産を取得したすべての者に係る課税価格の合計額のうちに占める割合」に小数点以下2位未満の端数がある場合において、その財産の取得者全員が選択した方法により、各取得者の割合の合計値が1になるようその端数を調整して、各取得者の相続税額を計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする。
 なお、上記の方法を選択した者について相続税額を更正する場合には、その選択した方法によって相続税額を計算することができるものとする。

(遺贈により財産を取得した一親等の血族)

18‐1 相続の放棄をした者又は欠格若しくは廃除の事由により相続権を失った者が遺贈により財産を取得した場合において、その者が当該遺贈に係る被相続人の一親等の血族(法第18条第1項に規定する一親等の血族に限る。)であるときは、その者については、法第18条の相続税額の加算の規定の適用がないのであるから留意する。

(特定贈与者よりも先に死亡した相続時精算課税適用者が一親等の血族であるかどうかの判定時期)

18‐2 法第18条第1項の規定に該当するかどうかは、被相続人の死亡の時の状況により判定するのであるが、特定贈与者の死亡に係る当該特定贈与者よりも先に死亡した相続時精算課税適用者の相続税額の計算において、当該相続時精算課税適用者が法第18条第1項に規定する被相続人の一親等の血族であるかどうかは、当該相続時精算課税適用者が死亡した時の状況により判定するものとする。
(注) 当該特定贈与者と当該相続時精算課税適用者が離縁している場合などにおいて、当該相続時精算課税適用者が同項に規定する被相続人の一親等の血族であるかどうかの判定は、上記により行うのであるが、同項の規定による相続税額の加算の対象とならない部分の金額については、18‐5により計算することに留意する。

(養子、養親の場合)

18‐3 養子又は養親が相続又は遺贈により被相続人たる養親又は養子の財産を取得した場合においては、これらの者は被相続人の一親等の法定血族であるので、これらの者については法第18条の相続税額の加算の規定の適用がないのであるから留意する。
 ただし、被相続人の直系卑属が当該被相続人の養子となっている場合(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失ったため、代襲して相続人になっている場合を除く。)の当該直系卑属については、相続税額の加算の規定が適用されるのであるから留意する。

(相続時精算課税適用者について一親等の血族とする場合)

18‐4 法第21条の15第2項及び第21条の16第2項の規定により第18条の規定を読み替えて適用する場合の「被相続人の一親等の血族」には、当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失ったため、代襲して相続人となった当該被相続人の直系卑属を含むものとして取り扱うものとする。

(相続税額の加算の対象とならない相続税額)

18‐5 相続時精算課税選択届出書の提出後に特定贈与者と相続時精算課税適用者が離縁した場合など、相続開始の時において法第18条第1項に規定する被相続人の一親等の血族に該当しないことから同項の規定により相続税額が加算される相続時精算課税適用者の相続税額のうち、法第21条の15第2項又は第21条の16第2項の規定により当該加算の対象とされないこととなる部分の金額の算出方法を算式で示せば次のとおりである。

A×

(注) 算式中の符号は、次のとおりである。
Aは、当該相続時精算課税適用者に係る法第17条の規定により算出した相続税額
Bは、当該相続時精算課税適用者に係る特定贈与者の死亡に係る相続税の法第21条の15第2項又は第21条の16第2項の規定により読み替えて適用される法第19条及び第21条の14から第21条の18までの規定により計算された課税価格に算入された財産の価額
Cは、当該相続時精算課税適用者の相続時精算課税の適用を受ける財産で特定贈与者の一親等の血族(法第18条第1項に規定する一親等の血族に限る。)であった期間内に当該特定贈与者から取得したものの当該取得の時の価額